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さくら

咲くや 散るや 知るは誰ぞ
空を染めゆく 花弁を
数えて 一人 夢を紡む
夢か 現か 境に在りて
落ちる花弁受け止める
白き手いつしか 消え失せむ
.
静かに 立ちて 闇のみこみて
波間に降りた 汝を探す
されど水面に 花がひしめく

散り急ぐ数多の花の中
言葉は色褪せ 意味を失い
ふるえる口びるから こぼれ落つや

こぼれ落つ言葉…言葉…
白く淡く 花の如 雪の如 溶けるや
.
咲き匂うた 花に記憶は
何処なりやと 問うている
全ては 輪廻の中に在りて巡る と
誰ぞ つぶやく
忘れたもうな

   
 

水の鏡

何を求め訪煌うや
知らぬが良い事もあろう
走り出すや立ち止まるや
此拠に在りて今を為す者

たぐり寄せる細き糸
継る先は闇と心得よ
のしかかる樹々の影
その身を案ずるが如

静寂の森に 冴やけくあるという
木霊の涙 集いて成ると人の言う

触れてはならぬ その水に
息を潜めて覗くが良い

真事のみ映す その水鏡
真名を告げねば 引き込むぞとや
心して近づけや

秘めやかに降る 白き霧の如
無言の叫び 満ち溢るると人の言う

   
 

涼風

涼し風の吹く 草いきれの上
幾多の葉を数え それになるという

水の在処を教えたもう
夢の在処を教えたもう

夏の陽差しの中で 
消えない哀しい記憶たち
ゆらゆらざわざわ 立ち昇り
虚空に浮んで 何を待つ
君を待ち 仇待ち 騒ぐ

行きて帰らぬ その名を呼ぶごと
渡り来る声を 指の先に聴く
水の軌跡をたどりたもう
夢の軌跡をたどりたもう

赤く染まった常葉木の 

思いは遥かに揺れる
さらさらきらきら光り 
うねりとなって何処へと
彼方へと 想い馳せ巡る

   
 

科戸の風

さあ顔をあげよや
その名は呼ばれし
風と光 まといて
闇に向いて走れ
科戸の風 天の八重雲の
吹き放つ事の如
闇を蹴散らし走れ

薄紅の花の香匂い立つ
水面に佇む 懐かしい面影

目指す夢はるか
樹冠をゆらしつつ
光持て進め
真名呼ぶ声がひびく

   
 

遠く 近く 漲るざわめき
白銀の月は 何を見る
その葉隠れでは 宴ほがい
にぎわしや


影なき者 ゆらり 誘う 闇

高く 低く 響くは笛の音
天地を繋ぐ 竜の声
道を失いし 者たち集い
にぎわしや


帰る道を ばくり 喰らうは 篁

耳を塞ぐ手が 代わりに聞く 慟哭・・・


.... mater dei
hora puronobis pecca toribus
nunc et in hora mortis nostorei A.....

   
 

雪虫

霜降る月に数えた 冷たき風に落ちる葉を
ひとつ ふたつと 消えゆくや 凍える指の先
陽溜りに寄る 幽けきその羽は
声なき唄で 焦がれし者を呼ぶ

揺る揺ると漂い舞う 雪の虫は何処へと
永遠に巡る輪を見よや 途切れし後も続く
継ぎし者に 伝われ思い
声なき唄よ いつの日にも 響け 空へ

瞼閉じる前に見ずや 春を告げし花の咲くを
耳を塞ぐ前に聞かずや その名呼び慕う者の声
言葉失せし前に告げずや 深く切ない想い
力尽きる前に その手で抱けや 愛しき者を

   
 

夕掛け

移ろう時を見よや
長く伸びゆく影と

その名呼ぶ 懐かしき声

眠りつく前に途切れて終わる
子守唄 まさぐり探しつつ

その蒼きまぶた閉じる
その赤きまなこ閉じる

音もなく崩れた
やさしき手の温り
最早誰そ彼も過ぎて
ただひらめきてそこに在る
白き木綿に向いて
幾度も幾度も幾度も願うた
あの子守唄をせめて
眠りつくまで歌うこと

   
 

八咫烏

羽ばたく  力強き翼が
羽ばたけ  力強き翼で


天を 焦がれる者
焦がれて 見上げる者


そう 探し求む道は 遙か遠くにあり
渡る風に聞くは 心強き唄


汝が身の儚さ 風に散る花の如くと 思うや


汝が身の儚さ 風に立つ花の強さを知らずや


差し伸べる 天に向かいて
金色の翼持つ者 見るや


今、天より八咫烏を遣わさむ
故れ其の八咫烏道引きてむ
その立たむ後より
幸 出でますべし


己の翼広げて
見るは遙かなる道
翼持つ者在りしと
羽ばたく我が舞い飛ぶ


汝が身の儚さ 風に立つ花の強さを知らずや


差し伸べる 天に向かいて
金色の翼持つは 我ぞと